社長メッセージMessage
今こそ「ものづくり」回帰へ!
~「見える価値」、「触れる価値」、「伝える価値」~
私が海外出張をした直近の最後は2020年3月。もうすく1年が経とうとしています。
少しずつ窓が開く場面もありますが、依然国境を越えた往来の窓は閉ざされたまま。
日本を始め多くの国々では引き続き「ステイホーム」が推奨され、閉ざされた空間で光を探す日々を送っています。
一方で、1月26日に国際通貨基金(IMF)が2021年の世界経済成長率見通しを上方修正し、5.5%(昨年10月時点の予測:5.2%)と明るい兆しも見え始めています。
業種や地域によって格差はありますが、私の周辺でもビジネスの回復ぶりが見えてきています。
日本では「ものづくり」を中心とした製造業(工業)が経済をけん引してきました。そこには大きな雇用が生まれ、世界へ市場を広げることで持続的な成長が期待されてきました。
しかし、現代ではサービス産業、特にインターネットを利用した新産業が活況を呈し、大きく構造が変化しています。日本のサービス産業は比較的国内向けが多く、雇用創出効果はものづくり程大きくはありません。また、市場変化が激しく、企業の浮き沈みも大きいので、人の生活は不安定になりやすく、格差も広がる傾向にあります。
世論はこうした時代の変化に適応し、「サービス産業化に乗り遅れるな」という傾向が強いのですが、私はここであえて「ものづくりへの回帰」を掲げていきたいと思います。
そこで、「これからの社会動向も考慮した『ものづくりの価値』」を考えていきます。
まず、1つめは「見える価値」です。
これからは「製品が何の役に立つのか」「どんな社会を築いていきたいのか」という「製品を通じた社会価値を示す」ことが問われます。自動車メーカーがまちづくりをし、家電メーカーが住まい提供をしています。中小企業でも部品や素材を通じてこうした価値を提唱していくことが大切です。
「ものづくり」ならその価値を「製品(部品・素材含め)という目に見えるものを通して提唱していける」、そして「多くの、比較的平等な雇用が生まれ、職場ができる」ので、人々に見えやすく、共感しやすいはずです。
そして、2つめは「触れる価値」です。
デジタル経済は無限の可能性を提供してくれます。触感を伝える技術開発も進んでいます。しかし、あくまでもバーチャル。人が機能させる五感にどうしてもその範囲や程度に制約ができてしまいます。
やはり「ものを触って感じる価値」は人間の感覚・感情をゆさぶります。「ものを通して人々に『触って感じる楽しさや便利さを提供する』という「ものづくり」産業には、これまで以上にその評価が高まってくるはずです。
最後に、3つめが「伝える価値」です。
「ものづくり」には技術・ノウハウの伝承が必要になります。その世代あるいは個々人の想いや努力、工夫、苦労、喜びの結晶が伝えられます。そして、次にさらなる改善や改良が加わり、磨きがかかって蓄積されていきます。
地道で大きな成長や飛躍はしづらくなりますが、そこには人が時や国境を越えてつながり、全世界で、または何百年経っても色あせぬ価値も出てきます。非連続な変化やバーチャルな伝承が主流のデジタル経済とは異なる価値といえるでしょう。
とはいえ、現在の「ものづくり」には「もの(物体)どまり」、「開発・販売(現場と直接関わらない仕事)と生産・保守(現場ありきの仕事)の分離」、「マニュアル化や伝承・後継者不在」などこうした価値を発揮できない問題も多々発生しています。
その解決に「デジタル技術の活用」や「サービス業態との融合」、「雇用やスキルの再評価」といった「これからの社会を見据えた『新たなものづくり』の進め方」を模索していかないといけません。
当社自身はものづくりを主力としていませんが、「『これからのものづくり産業』への回帰」を実現することを私たちの貢献すべき価値ととらえ、全力で取り組んでいきます。