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社長メッセージMessage

バックキャスティングはゴールから考える…だけ?

~制約を受け入れる思考法~

  

SDGsや環境問題の解決などでしばしば言われる「バックキャスティング思考」。 よくある解説は「まずゴールがどうなるかを想定してから、今何をするべきかを考えること」といったものです。私も今までそう理解していました。

     

でも、それって「3年後の売上目標は今の倍だ!」といって猛烈営業をしかける方法と何が違うんだろう、という気もするし、

   

「2050年までの実質カーボンニュートラル」宣言に続いて、「2030年の温室効果ガスの削減目標を引き上げる」と意欲的に語る一方で、火力発電の縮小・廃止が段階的となり、世界の批判を受けているのを見ると、

   

たいして意味のあることなんだろうかとひっかかっていました。

    

しかし、バックキャスティング思考のだいご味は単なる「思考の順番」ではなく、「思考の方法」であることに気づいたんです。

    

それが、「制約を乗り越えるのではなく、受け入れることで全く別の社会を発想する」こと。

    

例えば、海洋流出で有害性が問題視されているマイクロプラスチックや国際移動でごみの途上国押しつけが問題視されているプラスチックごみ。

    

この対策として日本では「プラスチックごみのリサイクル(原料として再生利用する)」や「プラスチック買い物袋の有料化」などが行われています。

    

これ自体すばらしいことではありますが、今の「プラスチックが使われ、捨てられる社会」から出ていません。少しでも使用量を減らし、有効利用しようという「プラスチックありきの社会」であり、それは「プラスチック利用の制約を乗り越えようする思考」なわけです。

    

これは「フォアキャスティング思考(今ある状態から未来を描く)」ともいわれます。

   

一方、「バックキャスティング思考」では、自前もしくは繰り返し使用する容器を買い手が用意して、「製品だけ(中身だけ)を売る」とか、 「容器をアルミでおしゃれに設計・製作し、使用後はそれを回収、もう一度充てんして販売する」といった方法になるわけです。

     

つまり、「プラスチック利用の制約を受け入れて、プラスチックを使わない別の社会(ライフスタイル)を発想する思考」になります。

    

フォアキャスティング思考の対策は既存産業が中心に進めており、バックキャスティング思考の対策は主としてスタートアップや外資系といった新興勢力が主役になっています。

    

どちらがいい悪いではなく、この両方の違いを吸収して、問題の本質や自らの立場(何ができるか)などを考慮することで「環境や社会課題をビジネスのチカラで解決する可能性が広がる」のだと思います。

     

でも、どちらかというと日本人はバックキャスティング思考が苦手。だからこそ、こうした思考法を意識的に活用して発想し、行動する機会が必要になります。

    

SDGsアクションと称して日本政府や日本企業が提唱しているものはフォアキャスティング思考にとどまっているものが多く、それが「頑張っているのに世界が評価してくれない」ジレンマにつながっているのではないでしょうか。

     

SDGsで求められている「世界の変容(Transforming our world)」はまさにバックキャスティング思考を前提にしたキーワードであり、そのためにも私たちは単に「ゴールから考える」でとどまらず、「制約を受け入れて別の社会を発想・実現する」ところまで考えて行動していきたいですね。

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